観劇土曜日記

土曜日は新橋演舞場に友人とお芝居を見にいったのだった。もらいチケットというのは、よいものだ。芝居なんて恥ずかしくてしょうがない。見てる方が。撮り直しオッケーアイドル演技オッケーNG集オッケーなテレビドラマ世代、というか、クールなフィルターなんかが一枚かかっていないと。現代っ子ですもん。

恍惚の人」と「知識人99人の死に方」(荒俣宏監修)の迷惑な意固地なばばあ、というイメージの強い有吉佐和子の(個人的にということです)「和宮様御留」が原作である。

公武合体のため有栖川某との婚約を破棄し、徳川家茂に降嫁した悲劇の宮様が実は偽物とすり替えられてた!という非常に少女マンガチックな設定であり、キャストのピーターが超絶美人であり(美人っていうのかなんていうか)それなりに見応えあり。

いわゆる芝居文化、といいますか、口上の切り方や、常連のおじさんしかわからない拍手のタイミング、幕間の過ごし方などひとつの作法のようなものができあがっている。非常に面白い。

ストーリーは、すり替わった宮様がとても破天荒な常識をしらない小娘という笑いポイントのまま予定調和でオチというのではなく、破綻、とでもいうような展開は、「自由すぎる」の絶句。ああ、日本人は意地悪だ。笑いとはいじめなのだ。

よるご飯は銀座のうどんや。板わさと天ぷら定食のてんぷら部分で軽く一杯。

雨。外へ出るタイミングを逃しておしゃべり。

旦那から催促のメールが今日はなかなか来なくて、つい長居をしてしまう。いつもなら「遅い」とかメールしてくるというのに。


最寄り駅。傘をもって迎えに来てくれている。サプライズ。
「どんな内容だった?」
「えっと、まずピーターこと池畑慎之介が美人だったことと、ストーリーは和宮の……」

和宮って誰?」

「……。最近の中高一貫高はこれだから……」

と一瞬思うけど、和宮がどれくらいスタンダードな日本史の知識か分かるでもなし、でも分かるような人が好きでもあるのですが、その分私も知らないことがたくさんあるのだし、人生はいろいろだと思うことにした。


家に帰れば、ああ、温かい我が家、雨に濡れたワンピースをハンガーにかけてもじもじ、帰りが遅いことに対するイヤミを言われるのかと思えば、テレビの脇のPS2の位置がいつもと違う。そして見知らぬコントローラー。

「どうしたの?」

と聞けば、

「ワイヤレス買っちゃった」

と満面の、そして少しご機嫌を伺う犬のような顔。

大体いつもゲーム機やガジェット的な散財をしてきたときはこういう顔だ。怒られると思ってるのかしら。別に、買ったっていいのに。

いやたぶんわたしには分からないくらいすごおくすごおく楽しいんだと思う。で、こんなに楽しくてごめん!みたいな罪悪感を感じてしまうのかもしれない。

いいのよ。その楽しみはあたしには一生分からないから。


ベッドで京極夏彦を読んでいると「ウイイレ」の音が遠くでしている。


クロアチアと日本は、日本が押しているのに1対0で負けたらしい。

「日本が勝つまで寝ちゃダメ」

と言い残して寝る。