美術館と宗教的感動
「エスクァィア」を久しぶりに購入する。
日々生きていると忘れそうになるのでアートに対する気持ちを高めようという目論見であーる。
「アートの聖地巡礼」ということで、一度は行ってみたいものの赤ぺん先生のイメージが邪魔をして食指がうごかなかったベネッセアートサイト直島が大特集されていたよ。どうもね、地中美術館というコンセプトから……いや、島全体のあのグランドデザインからして……宗教的共鳴みたいなものがダイレクトにびんびんと伝わってきすぎて、苦手、だったのだけれど、特集を読み、それは意識的に作られた精神的場なのだ、と知り、積極的に行こうと思った。
美術館は、教育的な雰囲気を持たないものは割とダイレクトに宗教的雰囲気を持ちだす気がする。
そしてそういうところのほうが、美的センスという点では優れている気もする。
優れてなくても、かも。
というのは、熱海にあるMOA美術館と、ベネッセアートサイトは、片方は行ったことないところなので完全に思いつき……直感なんだが……同じ匂いがするのです。MOA美術館は、例えば、金の茶室(森村泰昌が自らのアートの舞台にもしていた)とか、尾形光琳やモネなど、いわゆる日本人的なミーハーなセンスの所蔵品で知られる一方、運営の母体は世界救世教という宗教団体。油断して見ていると割とそこかしこに……有機野菜……波動……世界の終末……何事にも油断は禁物なのである。
まあ行ってみると、所蔵品より美術館自体の意図的な建築デザインが見所だと言えるだろう。入館してすぐ、異様に静かで長く、薄暗い中に光の線が走っているようなエスカレーターに乗らされる。ちりー……ん……と微かなニューエイジ的なミュージックも流れまさに魂が高次の世界へと旅立っているようである。踊り場のようなところは完全に胎内回帰的サムシングで満ちあふれている。途中には熱海の美しすぎる海がスコーンと見渡せるテラス。ぐわー心が乱されるーそして静まっていくー。
弱ってる人には刺激がキツいくらい。
建築という、計算された手法によって演出された宗教的浄化の感覚に取り込まれそうになるのです。まあ、そういう意味で、気をつけねばならない。なにか、勧誘などにマニュアルがあるように。ただその合理的刺激に、ゆるぎないものを感じたような錯覚に陥らないように。
きっと今の世の中でもっとも、精神的な場として有効なのは、新興宗教の建物ととんがってる美術館なのかもしれないのです。新興宗教の建物は東京でも容易く見つけることが出来るのでいつかめぐってこっそり写真を撮ってみたいよ。浄化されたいの! そしてだんだん女子版『珍日本紀行』みたくなってるのに気がつくといい自分!
- 作者: 秋元雄史,安藤忠雄ほか
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/11/22
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 66回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
- 作者: 中島多加仁
- 出版社/メーカー: たま出版
- 発売日: 1996/12
- メディア: 単行本
- クリック: 18回
- この商品を含むブログ (1件) を見る